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2008年09月05日

友禅 上木



上木さんは手書き友禅の職人さんである。この仕事に携わったのは、親が友禅の仕事をしていたためだという。糸目と呼ばれる境界の内部に手作業で染色していく。素人には同じ色にしか見えない部分も、染めていく色を少しずつ変えて着物の柄に奥行きを与えていく。配色は職人さんそれぞれで異なっており、同じ柄を染めるのであってもそれを染める職人さんが異なると、着物柄の仕上がりが異なるそうである。
 友禅の仕事の魅力、やりがいについて尋ねると、
「一生懸命作った商品がお客様に喜んでもらえること」
と語ってくださった。また、
「友禅の職人は、「作家」ではないんですよ。」
と言う。職人の仕事は、芸術的に立派な作品を残すことよりも、一つ一つの仕事を丁寧に注文通りにこなし、悉皆屋さんに仕事を回していただけるような仕事をすることが重要だと考えているそうだ。
この様な仕事に対する真摯な思いは、ちゃんと仕事として戻って来ているように思われる。伝統工芸が衰退する中で悉皆屋さんからの仕事がなくなる工房もある中、上木さんの場合は、仕事を依頼してくれる悉皆屋さんがきちんとおられるそうだ。しかし、その仕事の量は減る傾向にあり、2人の息子に後を継がせる気はないそうだ。上木さんがこの仕事を始めたときはまだ仕事があったが、この不景気で将来性が薄いといった考えもあり、今はよほどの決意がないと人にこの職を勧めることはできないそうだ。
 そんな上木さんに、ご自身の仕事に対する誇りを聞いたところ
「う~ん、この仕事は一反一反が勉強やからね。これでいいとう境界はないんだよ。」
と答えてくださった。一つ一つの仕事に全力を注ぎ込みながらも、常にどこかで更なる向上を考えている。こういった返答から、上木さんの職人魂が伝わってくる気がした。



 お客様の要望に応えることを一番に考える上木さんは新たな取り組みに対しても肯定的な意見をお持ちだ。
「もはや昔ながらのやり方だけを貫くだけでは生き残っていけない。」
という考えもお持ちで、個人や、若手のベンチャーから、友禅を洋服などに施してほしいという依頼があれば、引き受ける準備はあると応えてくださった。多々仕事を待つだけでなく上木さんは今、自分からも手を伸ばして仕事をしようとしているのである。
 最後に、どんどん日本の街から着物が消えていく中、友禅をどのように残して生きたいか訪ねたところ、着物の需要は減っているが、決してなくなることはない。花道、茶道、落語などの文化が耐えない限り、着物も生き続ける。
「着物は日本の民族衣装であり、そらええもんですよ。」
としみじみと語った上木さん。誇りある日本文化‘着物’を作る工程の一つとして、今日も上木さんは着物を染めています。
  


2008年09月05日

創作作家 高岡

高岡さんは着物生地に下絵まで書く図案作家さんだ。この他に、仕上がった着物に筆と金粉を用いた彩色を施す仕事もしている。これらの仕事の中で最も重要なのは、依頼者のイメージを絵にすることだという。依頼内容は多種多様であり、どこにどういった絵を描くかを細かく指定してくる人もいれば、「菊の花中心で」等、大雑把な依頼しかしてこない人もいるそうだ。こういった依頼を形にしていくのが高岡さんの腕の見せ所である。



この仕事には様々な技術が必要である。例えば、紙でなく布生地に絵を描く技術、下絵だけで魅力的に見せる衣装力、美しい仕上がりを想定しながら絵を描く技術、などである。特に、下絵を描く段階では着物はまだ一反の生地であり、縫い合わせたときにきちんと柄が合うようにする必要がある。また、配色のことを考えて図柄はある程度大きく書いたり、見た目を考慮してデフォルメした絵を描いたりすることも重要であるという。
作業工程として、まず木炭で大まかな図柄を配置していく。そして、鉛筆で図柄を描いていき、最後にサインペン等でその図案を完成させる。この下絵の上に白生地を乗せ、透けて見える下絵を露草の一種である「あおばな」から取れた染料でなぞる。



 この後、この生地は糸目屋さんに送られ、友禅染を施す部分が染まらないように糊で防染し、下地を染め、糊をはがし、友禅による染めの工程へと移っていく。
 思ったとおりのデザインを描けるようになるまでには、文献を参考にして図案を描いたり、写生をしたり、何度も何度も絵を描くことが必要となる。そうすることで、非常に高度なデフォルメもできるようになるそうだ。こういった絵の修行の場として、昔は「追加注文」という仕事があったそうだ。追加注文とは一度デザインした着物と同じ図柄の下絵を描く、という仕事である。これは、弟子が着物の図柄を覚えたり、着物に絵を描いたりできる格好の修行の場であった。しかし、現在はコピー技術が発展してきたため、この仕事はなくなっている。したがって、現在は弟子に修行の場を提供するのは難しく、また弟子の収入を確保することも厳しい状況である。
 着物の仕事が少なくなってきた現在、高岡さんは趣味も高じてミニクーパーのタペストリーや、扇子の製作も行っている。これらの商品も大変魅力的である。



最後に伝統工芸を扱った新たな企業についてどう思うか尋ねたところ、
「着物の仕事が少なくなってきたなら、新たな仕事をしなきゃならない」
と新たな取り組みに対して肯定的な答えが返ってきた。高岡さん自身もデザイナーとして様々な仕事に挑戦中なのだ。今後、高岡さんがどの様な新しい作品を生み出していくのか、期待がかかる。
  


2008年09月05日

紋章 鹿島



鹿島さんは、高校を卒業後、父親の後を継いで紋章工芸に従事した。鹿島さんが手掛けている仕事は、着物に家紋を描き入れる作業であり、その工程はすべて手作業である。墨を磨り、細筆・コンパス・定規などを使い、寸分の狂いもなく、細かい図柄を描いていく。その技術は10年取り組んでやっと完成するという。



しかし、印刷技術の普及などにより、手作業による紋章技術の需要は年々減少しているそうだ。鹿島さんもこういった時代の流れは受け入れるしかないという。
「ITや機械の技術が生まれた背景には、昔ながらの手作業があったことを忘れないでほしい。」
これが鹿島さんの最も主張したいことだそうだ。京都には技術系の企業が多数ある。その背景には、京都の伝統工芸が関係していると鹿島さんは分析する。確かに、ITや機械の技術は紛れもなく人間の技術を超越している。しかし、それらが生まれた背景には必ず「手作業」という工程が存在し、それをベースにして機械技術が発展していったはずである。
鹿島さんは、現代技術の根底となる「手作業」が衰退していくのはやむをえないが、若い人々がその技術を知らないままに終わってしまうのは実にもったいないと考えている。鹿島さんは紋章工芸において数多くの賞を受賞しており、新聞社やテレビ局などのメディアも数多く取材に訪れている。それだけ紋章の技術は世間から注目を浴びている。
「多くのメディアに取り上げられることで、自分のやってきた仕事に対して自信を持つことができた。」
と語る鹿島さん。職人さんの中には、自分の技術を公開することに対して懸念を抱く人も多い、というイメージがある。それに対し、鹿島さんの場合は非常にオープンなスタンスで、人に物事を教えることが好きだという。大学に出向いて、紋章技術の公開授業を行ったこともある。実際、我々の取材に対しても非常に明るく、親切に説明をしてくださった。今まで思い描いていた職人さんのイメージとは違う。
 ただ、取材を多く引き受けたところで仕事の増加に繋がるかというと、決してそれは望めないという。鹿島さんは、売り上げを伸ばすことを目的として取材や講演活動を行っているのではない。純粋に、「知らない人たちに紋章技術を伝えたい」その一心からの活動なのだ。
  


2008年09月05日

染工 池山

池山さんは、白生地を染め上げる無地染めをされている。白生地を斑(むら)無く、お客様の要望どおりの色に染め上げるのが無地染めの仕事だ。手で染めていたころは、‘擦れ’、‘折れ’といった染め斑が出ないような技術が必要だったそうだ。しかし、今は機械を用いて擦れ’、‘折れ’のほとんど出ない様な染め方をしているという。しかし、依頼どおりの色に染め上げるには職人の技が必要である。色あわせは、機械化することが難しく、染めるための染料を作るのは職人の長年の勘であるという。



 現在、機械を取り入れたり、仕事の依頼人が変化したりし、池山さんの工房は工場とほとんど変わらない形をとっている。
「最近は職人という意識はなくなってきているのではないのではないか。私たちも会社の一社員だと思っています。」
と、池山さん。職人さんのように悉皆屋さんから仕事を請けることはほとんど無く、様々な依頼者からの委託加工をすることが主な仕事になっているという。また、工場で働く作業員がするのと同じように、正しく機械を使えばほぼ斑のない商品が仕上がるのだそうだ。また、徒弟制度というものも少なくなっているようだ。この様に、会社形態の形を取る工房が増えてきているという。
無地染めは機械を用いることが多くなり、染め斑の良し悪しで、工房間の差は出なくなりつつあるという。各工房で差をつけるには、いかに依頼どおりの色を染め上げるかにかかっているという。機械化することで斑の無い製品は当たり前になりつつある。今、染めの価値を生み出しているのは、職人の勘が必要な色あわせの部分である。いくら機械化したところで、職人さんに仕事をもたらすのは、職人さんの技術なのだと感じる。
また、池山さんは一色のみの染めだけでなく、複数の色を染める技術を生み出し、お客様のニーズにより広く応える準備をしている。伝統工芸を用いた新たなベンチャー企業についても肯定的で、
「新たな商品開発のための依頼があれば協力したい。」
と、自らも新たな仕事を獲得しようという意気込みで語ってくださった。